MPTE第47回勉強会 報告

■日時:2019年10月4日(金)
■場所:毎日放送本社 ちゃぷらステージ

 

映像・音声・照明などの最新技術情報を紹介するMPTE勉強会を、大阪では1年ぶりとなる10月4日に、毎日放送本社1階ちゃぷらステージにて開催いたしました。今回は6月に開催した基礎技術セミナーとは違って、専門的かつ高度な講演に向けて準備を進めた結果、グラスバレー株式会社様、株式会社アイネックス様、そしてNHK知財センターのご協力を得て開催する運びとなりました。専門的な内容にもかかわらず、会場には定員以上ののべ110名の方にご参加いただき、盛況に終えることができました。

《講演内容》

◆Video over IPの基礎とその最新動向について
講師:グラスバレー株式会社 橋本章郎様

年々注目度が高まるVideo over IPは、リモートプロダクションを中心に国内外での導入が始まってきています。Video over IPの普及、啓蒙を推進する団体AMISの創設メンバーでもあるグラスバレー株式会社の立場から、背景や市場の動向、要素技術などの最新情報を紹介。橋本様は、セールスエンジニアリングマネージャーとして、ルーティングスイッチャーやカメラなどのプリセールスを担当されていて、今年2月にスウェーデンで開催されたFISアルペンスキーで、会場とホスト間約600kmを150Gbの大容量回線で結んで行った中継オペレーションや、ロンドンと東京を結んだ超長距離ダイレクトIP実証実験など、興味深い事例を紹介していただきました。会場の参加者からは「IPシステムガイドの日本語訳があれば助かる。」といったリクエストが出るなど、関心の高さが伺えました。
 

◆Pixellotカメラによる中継制作の概要とAIカメラの可能性
講師:株式会社アイネックス 川本龍文様

株式会社アイネックスでは、この春、イスラエルPixellot社のAIカメラを2式導入し、サッカー、ハンドボールなどフィールドスポーツの配信業務で運用してきました。AIカメラは万能なのか、北京オリンピックVEや野球中継TDなどを担当してきた川本様が、使用感や課題、将来の可能性について報告しました。▼AIカメラは、フィールドとの距離や高さなど設置する場所に条件がある▼現場にオペレーター1名いればOKだが電源や回線設置要員が必要な時もあるなど基本説明のあと、実際の中継映像を視聴。選手やボールの動き、スコアボードを自動でしっかり追えたこともあれば、太陽光などの影響で被写体をうまくとらえられなかったこともあると、実例をもとにわかりやすく解説していただきました。人手を極力かけずAIカメラを活用することで、テレビ局が普段中継しない小学生タグラグビーなどの試合もきめ細かく伝えようとする姿勢に、感銘を受けました。
 

◆NHKアーカイブス16mmフィルムの4K化、そしてカラー化の取り組み最前線
講師:NHK知財センター 霜山文雄様

2018年12月にスタートしたBS4Kの目玉コンテンツの一つが、NHKの「4Kでよみがえるあの番組」です。昭和40~50年代に人気を博した「新日本紀行」をデジタルリマスターし、4KHDRの高解像度かつ色鮮やかな映像で紹介しています。 オリジナルの16mmフィルムに記録された映像情報を、色、明るさともに最大限引き出すことで、従来の放送では見えなかった部分まで表現することに成功しました。4K化のプロセスと乗り越えてきた課題、番組での実用が始まったAIによる白黒映像のカラー化の最前線について、約20年にわたって映像修復業務に携わってきた霜山様が報告。フィルム映像の4K化は、過去と未来をつなぐ新たな放送文化を創造するだけでなく、新規に番組を制作する場合に比べて制作費用を低く抑えられるなど、これまでの高画質保存とは違う新たな発想で取り組んでいることがわかりました。AIの導入で、今や20万円程度のPCで白黒映像をカラー化することが可能なことも目からウロコでした。
 

挨拶をする宮越大阪支部長

挨拶をする朝倉理事
 

質疑応答の様子

受付の様子
 

熱心に講演を聞く参加者
 

今回これほど充実した勉強会が開催できたのも、会場を提供していただきました毎日放送様ならびに講師の皆様、足をお運びいただきました参加者の皆様を含め、多くの方のご協力のたまものです。すべての皆様に感謝申し上げます。MPTE勉強会は、4K8K、VR、VFX、クラウドサービスなどの最先端技術から、ドキュメンタリーの撮影手法や照明の心構えなどの職人技まで、幅広いテーマで開催しています。皆様には今後も、勉強会で新たな知見を得ていただくとともに、より多くの方の参加を積極的に呼びかけていただきますようお願いいたします。

今回の内容については、協会ホームページで動画配信(権利問題等に関わる内容は部分割愛する場合があります)を行います。「参加できなかった」、「もう一度聞きたい」、「他の方にも聞かせたい」などの声にも応えております。但し、協会会員である条件が必要となりますが、この他も会員のメリットもありますので、詳しくは協会ホームページをご覧いただければ幸いです。

<近藤博英:NHK大阪拠点放送局報道部、本誌編集委員>