映画テレビ技術フェアin関西2019 報告

■日程 2019年12月5日(木)6日(金)
■会場 クリエイティブネットワークセンター大阪
    メビック扇町 カンテレ扇町スクエア
■参加人数 440名(展示会2日間)
      450名(セミナー4回)

 

大阪支部は、ことしもクリエイターや放送技術関係者の皆様を対象として、映像制作技術の最新情報を提供するセミナーと各社の最新機器の展示を実施しました。

展示参加社
アストロデザイン㈱/EIZO㈱/エヌ・イー・ピー㈱/カナレ電気㈱/キヤノンマーケティングジャパン㈱/グラスバレー㈱/㈱昭特製作所/㈱コスミックエンジニアリング/㈱シグマ/㈱JVCケンウッド/㈱綜合舞台/ジャパンブロードキャストソリューションズ㈱/㈱ビデオサービス/ソニービジネスソリューション㈱/ビデオトロン㈱/㈱フォトロン/パナソニック システムソリュー ションズ ジャパン㈱/富士通㈱/富士フイルム㈱/ブラックマジックデザイン㈱/㈱朋栄/三友㈱

■展示会場

今回は22社が参加して放送関連機器を出品。4K・8Kの本放送が始まって1年が経ち、モニター類や周辺機材など特にスーパーハイビジョン機器の進化はめざましく、カメラステージには最新型の4K・8Kカメラも並びました。各社のブースでは、訪れた関西の技術者たちが機材を手に取って比較したり、メーカーの皆様の説明を熱心に聞く姿が目立ちました。

 
 

■セミナー

今回は技術情報セミナーが3回、映画監督のトークショーが1回、計4回のセミナーを開催しました。毎回定員100名を超える方々にお越しいただき、また参加者から多くの質問もあり、大変盛り上がりました。

 

① 12月5日 13:00 ~ 14:30
 「チコちゃんに叱られる!」のVFX技術について

㈱NHKアート 林伸彦氏

1日目のセミナーは、「ボーっと生きてんじゃねえよ!」でおなじみ、あの「チコちゃん」を最新のVFX技術によって生み出した、㈱NHKアートの林伸彦氏の講演からスタート。▼ゲスト出演者がチコちゃんと「かぶる」時のマスキング作業 ▼言葉によってリアルな口の動きをつける作業 ▼チコちゃんが鏡に映り込む姿までリアルに表現する作業など、人気キャラクターづくりの裏側を、企業秘密手前ギリギリまで楽しく解説していただきました。
会場からは、「生放送はできないのか」「何人くらいのチームで作業しているのか」など質問が相次ぎ、チコちゃんの人気の高さが伺えました。

② 12月5日 15:00 ~ 16:30
 『孤狼の血』『凪待ち』『ひとよ』白石和彌監督トークショー

白石和彌監督

続いては、日本映画界の第一線で活躍されている白石和彌監督をお招きしました。2010年、初の長編映画監督作品『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で注目を集め、ノンフィクションベストセラーを原作とした『凶悪』では数々の賞に輝いた白石監督。映画評論家の田辺ユウキ氏との対談形式で行い、2019年公開の『凪待ち』『ひとよ』など、監督を務めてきた映画への思いや制作秘話を話していただきました。「弱い立場の人たち、社会から外れた人たちを主人公にすることで、今の社会がどうなのかが見える。」という力強い言葉は、参加者の心を引きつけていました。
「映画カメラマンに求めるものは?」という会場からの質問に対しては、「カメラマンは映画現場のスーパーマン。私が悩んだときは一緒に悩んで考えてもらい、お互い協力しながら全体を引っ張っていく存在であってほしい。」と語りました。

映画評論家の田辺ユウキ氏と対談形式で進行

③ 12月6日 12:30 ~ 14:00
 第1部「技術の正体」~テレビ、音声の基礎編~

④ 12月6日 14:10 ~ 15:40
 第2部「技術の正体」~HDR、最新技術の基礎編~

㈱Zaxx 舘英広氏
協力:一般社団法人日本ポストプロダクション協会

2日目のセミナーは「技術の正体」と題して、㈱Zaxx 代表取締役の舘英広氏が2本立てで講演です。アナログとデジタルの違い/テレビ方式/タイムコード/ラウドネス/RAWとLOG /色温度・・・、知っているようで実は詳しく説明できない、そんな放送技術用語について、アニメーションも織り交ぜながらわかりやすく解説していただきました。特に興味深かったのは、テレビのフレームレート(1秒間に再生する映像の枚数)が29.97fpsという中途半端な数字なのはなぜかというお話です。30fpsの白黒放送からカラー放送に変わる際に、①白黒の規格から大きく外れず②白黒映像へカラー信号の影響を与えず ③音声にカラー信号の影響を与えないようにするため、0.1%減らして29.97fpsとした、ある意味、当時の苦肉の策だったということでした。
最後に舘氏は、「偉大な先人たちが繋いできた技術に感謝しよう」のメッセージをスクリーンに映し出し、セミナーを締めくくっていただきました。

■交流会 12月5日

1日目の終了後には、カンテレ扇町1階で、セミナーの講師の皆様、展示参加社の皆様、そして、東京や大阪の会員の皆様など75名が参加し、交流会を行いました。

「映画テレビ技術フェアin関西」を振り返りまして、今回も多くの皆様のご協力をいただきました。セミナーの講師の皆様、展示会出展各社の皆様、会場をご提供いただきました、メビック扇町様、関西テレビ放送株式会社様、会場の設営・撤収にご協力をいただきました大阪支部の幹事の皆様、そしてバックアップしていただきました事務局の皆様、大変ありがとうございました。大阪支部では、次回も映画テレビ技術フェアをさらに盛り上げていきたいと考えています。

(近藤博英:NHK大阪拠点放送局報道部、本誌編集委員)