大阪支部 MPTE第56回勉強会報告

テーマ
NHK:「IPプロダクションの取り組み」
関西テレビ放送網:第74回技術開発賞「新クロマキー技術 ニジクロの開発」

日時:2022年2月2日(水)
開催方法: Teams開催
参加人数:142名

 

大阪支部では、関心を集めている「IPリモートプロダクションの最新動向」と第74 回技術開発賞を受賞した注目の「新クロマキー技術」について、NHKと関西テレビ放送から講演いただき勉強会を開きました。コロナ第6波により大阪・兵庫・京都にまん延防止措置が適用されていることからTeams でのリモート開催となりました。

①『IPプロダクションの取り組み』

NHK福岡拠点放送局 技術部 西田 幸司氏

(講演者の西田氏)

国際的なスポーツイベントでIPプロダクションをはじめ広く制作システムの構築を担当された西田氏がその準備を開始されたのは開催の5 年以上前。日進月歩のIP技術を5 年先の、しかも大規模なオペレーションで安全に活用するためには、どれだけの準備と調整ごとが必要だったのか。IPに関するテクニカルな話しにとどまらず、目指す放送技術や設備の斬新さと効率化そして世界的なイベントのコンセプトに向き合うエンジニアの姿勢にも話題が及びました。

IPプロダクションのメリットと広がる可能性に 関心が集まる昨今ですが、信号伝送の冗⾧構成を検討する中では従来のベースバンドとは考え方そのものが異なり、西田氏は無事イベントでの大役を終えた今でもIPのバックアップについて、より有効な対策を模索しているとのことでした。IP技術が進化して遅延の問題など様々なハードルが克服されつつありますが、「IPは障害時のポイントが分かりづらい。IPネットワークの監視が従来のキャリアに益して重要だ」という教訓を強調されました。

(大阪支部・事務局の様子)

②第74回技術開発賞『新クロマキー技術「ニジクロ」の開発』

関西テレビ 制作技術センター
金子 宗央氏/大西祐輔氏

いくつもの技術賞を受賞された大発明「ニジクロ」。
その開発秘話とあっ!と驚かされる仕組みについて、照明一筋のエンジニアである金子氏が子ども博物館の人気学芸員のごとく分かりやすく面白く、実験を織り交ぜて解説されました。

(左:大西氏) (実演解説の金子氏)

高度なデジタル技術が世界中でしのぎを削る現在 にあって画像処理に使うのは最新のコンピューターではなく、2 種類のフィルター。しかも偏光板も位相差板も従来から存在していてそれらの性質も既知のものであるという超アナログな発明に参加者の多くが膝を打ちました。

大袈裟ではなくハリウッドも飛びつきそうなこの 新クロマキー技術は⾧年、光の専門家として現場で自分の目と手で照明を操ってこられた金子氏ならではの発想で、「従来技術の課題を当たり前と思わずに、『もう少しいい方法はないかなぁの気持ち』を忘れたくない」という締めの言葉には軽快な語り口とは逆に重厚な説得力がありました。
講演後の質疑では、「モニター再撮は可能なのか」や「被写体足元までのフルショットでも使えるのか」等、まるで明日から自社で利用することを想定したような質問が相次ぎました。

今回の勉強会もコロナ禍の中でのリモート開催ということもあり、西田氏(NHK)からはIPプロダクションに関して中継車に代わって広めのスペースを確保できる仮設の制作拠点の利点や工夫にも言及がありました。また、金子氏(関西テレビ放送)のニジクロのしくみ紹介ではリモート会議のカメラを通して見ているからこそ色が変わる"マジック"を参加者全員がライブで体感できました。
それぞれの講演では本題のテーマはもちろんのこ と、ポストコロナの観点からも業務の進め方やリモート会議の可能性など、示唆に富んだ内容となりました。

[ 森茂樹(日本放送協会・大阪)]