第7回基礎技術セミナー報告

日 時:2024年2月21日(水)13:30~17:30

開催場所:株式会社千代田ビデオ内テレビスタジオ

会 費:個人会員:無料 法人会員:2,000円 非会員:4,000円 学生:無料

 

講 演

① ENGの基礎 『CinemaLineカメラを用いた撮影について』 (13:40~14:20)
 講師:(株)日テレ・テクニカル・リソーシズ
    制作技術部 石渡 裕二 様 岩上 貴士 様

冒頭FXカメラの特徴や利点の説明の後、各カメラの違いについて説明頂いた。
次にロケでの撮影スタイルについて、カメラの選択、スロー収録、レンズセレクト、露出調整、NDフィルターの選択、フリッカーの軽減等について解説いただいた。
更にSLog撮影に関してCineELでの撮影の注意点、撮影中もできる限りBaseISOで適正な明るさで撮ることが重要との説明があった。
また、ジンバルを用いての撮影について注意点、焦点距離調整について触れられた。
最後にハイクオリティな機材がローコストで手に入るようになり、インフルエンサーなど様々なクリエーターが台頭してきているので、常に情報収集し、自分の知識と経験をアップデートする必要があると説明があった。

【会場の様子】

【講師の石渡裕二様 岩上貴士様】
 

【講師の松田和樹様】

② VEの仕事について (14:20~15:00)
 講師:(株)フジテレビジョン 制作技術統括部
    松田 和樹 様

VEの仕事は映像のトーンや効果を調整する【VIDEO】的な側面と、映像・音声が通る流れを構築する【Engineer】的側面があると紹介された。
カメラ調整の前に、色温度、色温度変換フィルターの説明があり、その後ブラックバランス、ホワイトバランス、ガンマバランス、ホワイトシェーディング、フレアバランス調整の説明があった。
更に応用編として異なる色温度で調整したカメラで、同一の照明色温度下で撮影した色味がどのように変化するかを実際の映像を見ながら説明していただいた。
次にEngineer的な側面から映像システム設計について、中継車の映像系統図を例に説明があり、具体例としてワールドカップバレー2023の中継システム構築とOA映像を国内向けと国際映像向けに振り分ける仕組みと実際の映像が紹介された。

 

【講師の森山顕矩様】

③ 伝送技術について (15:10~15:50)
 講師:(株)テレビ朝日 技術局 技術運用センター
    森山 顕矩 様

最初に伝送の種類について、番組ごとに求められる伝送が紹介された。また、FPU、SNG、キャリア回線、IP回線、モバイル回線ボンディングについて、メリットとデメリットが説明された。
次に伝送の番組事例について、番組ジャンル、中継場所、バックアップ回線などを考慮する必要があることが紹介された。
伝送手法の変化と課題に関しては、コロナ禍におけるビデオ会議ツールの活用、リモートプロダクションについては、国内外からの事例がクラウド活用、可搬型衛星通信サービスの活用を含め紹介された。
最後に伝送のこれからと注意点について、IP伝送の知識、クラウドの拡大、コンテンツ配信の拡大、セキュリティー対策を意識して取り組む必要があると説明があった。

 

【講師の中村全希様】

④ テレビ音声の仕事について (15:50~16:30)
   講師:(株)TBSテレビ メディアテクノロジー局
      制作技術統括部
      中村 全希 様

「音声さん」の仕事は、音をとる(収音)、調整する(MIX)、聞かせる(PA)、整音し、効果、音楽を足して完パケる(トラックダウン、MA)、インカムや送り返し、マイナスワン等、「音に関わる素材、機材の管理」など多岐にわたるとの説明があった。
まずはマイクの世界について、音声機器レベルの単位dBuの説明とラインレベルとマイクレベルの違いについて説明があった。
次にマイクの種類と音を録るシーンについて例を挙げながら紹介された。街頭インタビューでマイクの種類と話者の距離によって、音の違いが分かるデモ映像も再生された。
テレビミキサーの業務については、視聴者だけでなく、番組運行者全てに「聞こえる音」を届けることが仕事であると紹介された。
音を整音して完パケる(トラックダウン、MA)について、収録番組と生放送の違いを例に挙げて説明して頂いた。
テレビ音声の宿命について、映画との違いを例に挙げながら説明して頂いた。次に、レコード大賞の例が紹介され、音声さんの仕事の幅広さが実感できた。
最後に音声さんの心得として「謙虚、信頼、可能性、正解」が大切であると述べられた。 

 

【講師の水野暁夫様】

⑤ 照明技術の基礎について (16:40~17:20)
   講師:(株)テレビ東京 テック運営局
      コンテンツ技術センター
      水野 暁夫 様

テレビ照明(映像照明)には、色の忠実度、色の好み、色彩調和、記憶、色の識別などの要素が全て当てはまると説明があった。
ものの見え方について、網膜にはL錐体とM錐体とS錐体があり受け取った視覚情報は脳で色、動き、形、奥行が別々に処理され、最終的に統合されると説明があった。
また、形を見るには輝度情報が重要なことが紹介された。
ライティング・人物照明については実際に照明をモデルに当てながら、当てる角度によって奥行を表現したり、カポックやレフ板でソフトにしたりできることが紹介された。
スモーク撮影の際、照明とカメラの位置により見え方が異なることが注意点として示された。
次に黒体放射の説明があり、キーワードとして色温度が挙げられ、LEDは同じ色温度でも色偏差にばらつきがあることが示された。
更に、キーワードとして色忠実度指数Rfについて99枚のテスト色票の色度を計算し、色の見えの差から色忠実度指数を算出する方法について説明された。
LEDライトがスマホのアプリで様々なシーンを簡単に演出できるデモも見せていただいた。
最後にVirtual Production Lightingについてデモ映像を見ながら最新機材MIMIK120が紹介された。
VPに求められることは、制作:リアリティ・予算、技術:作業効率・省スペース化、演者:芝居場・没入感などであると説明があった。