京都支部・大阪支部共催 第71回映像技術賞受賞作品上映会&トークイベント 報告
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■日 時:2019年2月22日(金)
■会 場:京都文化博物館 フィルムシアター
■参加者:第1部 160名/第2部 52名
■共 催:一般社団法人日本映画テレビ技術協会 京都支部・大阪支部
■協 力:京都クロスメディア推進戦略拠点/京都文化博物館京都支部(支部長:妹尾啓太/東映京都撮影所)と大阪支部(支部長:大沼雄次/NHK大阪放送局)は、これまで別々に開催していた映像技術賞の上映会を京都市の京都文化博物館で共催しました。第1部は劇場公開作品の「関ヶ原」、そして第2部は放送作品のNHKスペシャル「戦後ゼロ年 東京ブラックホール」のVFX制作解説、「夢への扉 課題研究」を上映、あわせて各受賞者にもお越しいただき貴重なお話をいただきました。
■第1部 映像技術賞<劇場公開作品>
撮影「関ヶ原」 柴主高秀氏
照明「関ヶ原」 宮西孝明氏(株式会社嵯峨映画)第1部では、109名の一般入場者を含め160名が参加しました。定員150名の会場は立ち見もでるほどの盛況でした。映画「関ヶ原」撮影の柴主高秀氏と照明の宮西孝明氏は、京都市内で原田眞人監督の新作映画の撮影に入っていましたが、お忙しいにもかかわらず、上映会にご参加いただきました。
柴主 高秀 氏宮西 孝明 氏撮影の柴主氏は、「高性能のカメラで撮影して、時代感を受け止めてもらえるか懸念していた。カメラの性能がよすぎると味気がない。役者が芝居していても他のところに目が行ってしまうことがある。そのためあえて映像を汚してきれいに撮らないようにした。」
「原田組は、『用意スタート』の声がない。ハリウッド的なシステムで、監督の『アクション』の声で役者が芝居をはじめると最初から最後まで通しで撮る。そのあとサイズを変えたり、被写体を変えたりして繰り返し撮る。役者は最後まで自由に動くのでドキュメンタリー的な撮影だと思っている。」 また夜のシーンでは、「照明の宮西氏にバルーンライトを作ってもらい、それを月の光に見立てると影が一つで、自然な映像を撮影できた。とてもありがたかった。」と話していました。
照明の宮西氏は、「カメラテストの時から、ろうそくの光を大事にしようと思っていた。姫路城などでは、ろうそくなどが使えず火気厳禁の現場だった。そうしたところでは、『疑似ろうそく』という電球のろうそくを使用して、実際のろうそくと同じ光量を調節するようにしたが、明るさが足りないところは増やすなどの対応をしていた。」と語っていました。
会場 京都市文化博物館 フィルムシアター■第2部 映像技術賞<放送作品>
①NHKスペシャル「戦後ゼロ年 東京ブラックホール 1945-1946」(VFX技術)/日本映画テレビ技術大賞受賞 小澤雅夫氏、吉田秀一氏、伊佐早さつき氏(株式会社NHKアート)伊佐早 さつき 氏第2部では、京都支部、大阪支部の会員など事前に申し込みをしていただいた52名がしました。参加者からの質問も多く会場は大いに盛り上がりました。
今回VFX部門は、NHKアートの3名の受賞者の中から、伊佐早さつき氏にお越しいただき、受賞作品についてどのようにVFXやCGを制作していったのか、制作過程について解説していただきました。
「時代の中に埋もれていたアーカイブ映像を多くの人に見てもらった。そして見たことのない不思議な番組との感想を得られた。」伊佐早氏はこのように語り、今回の番組は、「心理的に断絶感が生じない見せ方を工夫」し、過去のフィルム映像に実写映像を合成して、スケールを感じる演出を積極的に採用したとのことでした。番組で実写合成に使用したアーカイブの選定は、VFXチームが自ら行って効果的な映像を提案し、6時間の映像から最終的に33カットの映像を選定したということでした。このときのアーカイブ映像のピックアップの判断基準は、「人物とのやりとり」、「ものに触れる驚きや面白さ」を期待し、「違和感のない映像が可能なカット」に絞ったということでした。実際の撮影は2日間のみであったため、本番前に疑似セットをつくり代役を立てて何度も撮影シミュレーションをおこなって、そこで時間がかかりすぎるカットは捨てたということでした。カメラは4Kを使用、ノイズやフィルムダストなどで劣化させた演出をしたそうです。限られた時間の中で、より完成度を上げていくためにさまざまな努力と工夫について、動画を使いながらとてもわかりやすくお話していただきました。②「夢への扉 課題研究 ~先生を超えて進め~」
撮影 平田周次氏(関西テレビ放送株式会社/株式会社ウエストワン)立子山 真樹 氏第2部の2作品目は、関西テレビ制作のドキュメンタリー番組「夢への扉 課題研究」を上映しました。受賞された撮影の平田周次氏は、ご都合によりご参加していただけませんでしたが、ゲストとして関西テレビ放送報道局報道映像部部長の立子山真樹氏に参加していただきました。上映後、参加者からは、「多感な女子高校生に近い距離でありのままを溶け込んで撮影していた点がすばらしかった」など多くの賞賛の声が聞かれました。立子山氏は、「ドキュメンタリー番組は、深夜枠しかないが、これからも優れた番組を制作・放送し続けていきたい」と語っていました。
京都支部と大阪支部の共催で「受賞作品の上映会」を開催したのは2回目、京都市の会場では初めての開催でした。イベント終了後の懇親会には、両支部から36名が参加して、ゲストのみなさんと共に大変盛り上がりました。私自身、京都支部の多くの方々とお話をさせていただいて、日頃からとてもお世話になっていることを知り、今後もこうした交流を深めていきたいと感じました。
最後になりましたが、ゲストとして参加していただいた受賞者のみなさま、会場をお貸しいただきました京都文化博物館のみなさま、そして連絡調整にあたっていただきました横山真一様はじめ京都支部のみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。[濱田 晴行(理事 日本放送協会)]