映画テレビ技術フェア in 関西 報告
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主催:一般社団法人 日本映画テレビ技術協会
共催:クリエイティブネットワークセンター大阪 メビック扇町
会場:クリエイティブネットワークセンター大阪 メビック扇町
大阪市北区扇町2-1-7 カンテレ扇町スクエア3F大阪支部では昨年12/6(水)~7(木)の日程で、恒例となった「映画テレビ技術フェアin関西2017」を開催した。前回同様、カンテレ本社横のメビック扇町3階を使って機器展示を行うとともに、カンテレ前1階のスペースを会場に3本のセミナーを催した。以下にその概要を報告する。
■セミナー
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①12/6 16:00~18:00
映画監督・撮影 木村大作トークショー
「誰もやらなきゃ、俺がやる!」
映画監督・撮影 木村 大作氏日本を代表するキャメラマンであり、かつ近年は映画監督としても成功を収められている木村大作氏に大阪までお越しいただき、大いに語っていただくという夢のような企画が実現した。
木村氏(以下監督と表記)のお話が直に聞けるということで、聴講者は京都の映画関係スタッフや関西のクリエーター・TV関係者のみならず、一般の映画ファンまで多岐に渡った。その結果、立ち見を含め170名という超満員のなかでのご講演となった。
まずは『劒岳~点の記』及び最新作の『散り椿』のメイキング映像を35分鑑賞した後、2009年に『劒岳~点の記』で初監督をされるまでの経緯や苦労から話を始められた。
そして、18歳から30歳まで黒澤組にいた経験が貴重なものになっていることや、高倉健さんに出会ったことがいかに大きかったか、さらにはすごい人をまじかで見ることがいかに大切か・・・それが「大切なもの(あるいは人)に出会えればそれだけで幸せだ」という監督のキーワードとなり、それが作品のテーマにも通じていることが明かされた。
いろんなエピソードや経験談を語られる中で、『散り椿』の主演でもある岡田准一氏への深い信頼が特に印象に残った。また、人間は60代までは何とか持つが、70を過ぎたら目標がないと生きられないといった人生論まで語っていただき、まさに全身全霊を映画にかけ、「ただ映画を作るためだけに生きている」とまでおっしゃる監督の生きざまを大いに感じる120分であった。②12/7 11:00~12:00
「海外事例に学ぶ、新しいワークフロー」
~クラウドを活用したソリューション開発~
(株)ユニゾンシステムズ R&D部部長 木村 文彦氏まずNABやIBCの展示からうかがえる世界の潮流として、4K・8KよりはIP接続やファイルベースワークフローが加速している印象が強かったこと、そしてクラウドの世界もより高度化し、HYBLID CLOUDからEDGE CLOUDへと進みつつあること等が紹介された。
そして最新の動画配信やリモート(クラウド)編集オペレーションの解説をいただいた。素材をクラウドにアップロードした段階で、AIによって動画の中に含まれている音声を基にスピーチがテキストに起こされ(しかも十数カ国語に!)、同じく映像に映っている人物や文字の解析も可能になっていること、さらには動画を解析してメタデータを作成しておけば、例えばある人物が映っているときのSNSや視聴率の変化を即座に解析できるなど、AIを活用していろんなことが可能になることが紹介された。
IT系の世界の進化の速さに改めて驚くとともに、クラウドやAIを活用するとこれまで考えられなかったようなサービスや解析が可能となることから、今後は我々の業界もクラウドとの連携がますます重要になっていくことが予見されるご講演となった。
③12/7 14:00~15:00
36×24mmフルフレームセンサーが拓く新境地
新CineAltaカメラ「VENICE」のご紹介
ソニービジネスソリューション(株)
マーケティング部シニアマーケティングマネージャー 入倉 崇氏ソニーにとってF65以来6年ぶりのフラッグシップモデル刷新となるシネマカムコーダー「VENICE」について、開発思想から実機の詳細、ワークフローも含め、幅広く解説をいただいた。
創造への信頼できるパートナーであること、美しい映像を紡ぐこと、そしてシンプルで直感的な使いやすさを実現することという3点を重視して開発が行われたといい、ソニーにしてはこれまでにないほど思い切ってシネマ寄りに振った設計であることが印象的である。
開発者が設計段階からハリウッドを含む現場の撮影監督と意見交換したことにより、メニュー構造から端子の場所や向きに至るまで、F65やF55から数多くの点を改善したとのことである。
このカメラを特徴づけている要素の一つとして、ハリウッドやCM撮影の現場で流行っているアナモフィックレンズを用いた撮影ができることが挙げられる。そのため、アナモフィックの基本の話から、アナモフィックレンズ独特の映像効果の説明、そしてVENICEでアナモフィック撮影した実例も上映いただき、VENICEの魅力を大いに感じることのできた60分となった。
■機器展示
昨年を上回る23社29小間、そしてカメラステージもメーカー4社の出展をいただき、たいへん盛況であった。今年はカメラステージを一番奥のスペースにしたことで入場者の回遊性が高まり、概ね好評であった。またこのフェア独自の試みである各社最新カメラの画質を直接切替比較ができるコーナーも、すでに名物企画となっており、来場者の関心が高かった。
来年度もほぼ同じ時期に開催することを検討している。この催しはInter BEEに行けなかった者はもちろんのこと、行った技術者にもメーカーの方とじっくり話すことのできる貴重な機会となっており、出展社や来場者にとって、より良い催しになるよう、大阪支部一同、なお一層努力する所存である。
最後になりましたが、セミナーの開催や出展にご協力いただいた各社様、そして本部事務局様に心より御礼申し上げます。
大阪支部理事 吉田恭一(㈱毎日放送)