第4回基礎技術セミナー & MTPE勉強会 報告
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■日時:2018年10月9日(火)
■場所:毎日放送本社 ちゃぷらステージ
■参加人数: 168名 -
大阪支部では、放送業界に関心のある学生や経験1年~3年の業界関係者を対象とした「基礎技術セミナー」と一定年数を経験した業界関係者や新技術に興味がある人を対象とした「勉強会」を開催しました。
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基礎技術セミナー
1.「ENGスポーツ撮影の基礎技術」
上田 敬一郎氏(日本放送協会)2020年の東京オリンピック開催が近づく中、オリンピックやワールドカップなどスポーツ競技の撮影経験が豊富な上田敬一郎氏にENGのスポーツ撮影の基礎についてお話しいただきました。
「スポーツ競技を撮影する場合は、まずは基礎的なカメラワークを知ることが大事です。ファインダーの中だけで選手を探していると大事な場面を取り逃してしまいます。自分の目で確認してから、カメラを振ることが必要です。ねらい通りにカメラを操作できるかは、三脚のセッティングがとても重要です。」カメラと三脚を使って実演していただきました。
「スポーツの撮影は何をどう狙うか、秒単位のマネージメントが必要になります。リオデジャネイロオリンピックでは、4Kカメラを使い、撮影ポジションや映像サイズを工夫して、これまでとは違う映像を撮ろうと心がけました。」一瞬のうちに判断を迫られるスポーツ撮影では、事前の準備と撮影するポジションがいかに大切かを熱く語っていただきました。
2.「無線伝送の基礎」上野 勲司氏(池上通信機株式会社)放送に関わる無線伝送がどのようにして行われているのか、無線伝送の専門家の立場から、上野勲司氏に基礎を解説していただきました。
はじめに無線による放送ネットワークをつかさどるSTL/TTL、TSL、FPUなどの装置から、中継現場での運用まで基礎的な説明をしていただきました。さらに、電波の性質については、電波の広がり(フレネルゾーン)やフェージング、そして、降雨減衰などについて基礎的な説明をしていただき、OFDMについては伝送量の確保の方法から、高速フーリエ変換(FFT)を使って復調するというところまで、短時間にもかかわらずわかりやすく解説していただきました。
3.「テレビ照明の基礎」瀧本 貴士氏(朝日放送テレビ株式会社)最初にテレビカメラと人間の眼の違い、色温度やホワイトバランスといったテレビ照明を行うための基礎について丁寧に解説していただきました。その上で、瀧本氏が担当したバラエティから歌謡番組、さらにはニュースやドラマまでの多様な番組について、照明の効果とそのねらいについて語っていただきました。
「ドラマ作品では、台本をしっかり読み込むことが第一です。登場人物の心情に沿った色調を意識したり、色味の対比によって時間的な経過を表現したりと、照明ができる演出はさまざまです。」
「テレビでは、3台から10台のマルチカメラを使った撮影が多く、各カメラからどのように見えるか、明暗をどのようにつくるかがということを意識して全体的な照明をプランニングしています。」
テレビ照明のプロとして、いかにこだわりと誇りを持って仕事をすることが大切か、多くの若い参加者の心に深く刻まれました。MPTE勉強会
「BS4K放送開始に向けて」
橋本 尚志氏(株式会社BSテレビ東京)10月1日にBSジャパンから社名変更したBSテレビ東京。その技術部門を率いられている橋本尚志技術局長に、12月1日開始の4K放送について最新の情報をお話ししていただきました。
4K放送開始に伴うBS放送の再編として行われた帯域削減やチャンネルの移動、ACASや受信機など4K放送の最新動向について、さらにはBSテレビ東京が4K放送開始に向けてこれまで検討されてきた2K/4Kサイマル放送や4K送出モードの統一、搬入基準や納品メディアなど、示唆に富んだお話をいただきました。4K放送の制作には多くの課題があり、それを一つ一つクリアしていくというさなかでのご講演となり、多くの参加者が4K放送開始直前の「熱」を感じた勉強会となりました。
6月18日に開催予定の基礎技術セミナーは、大阪北部地震の発生で当日に中止を決定し、関係の皆様には、大変ご迷惑をおかけいたしました。今回、講師の皆様をはじめ、会場を提供していただきました毎日放送様、そして幹事社の皆様など多くの方々のご協力でMTPE勉強会と併せて開催することができました。日程が延期となりながら、足をお運びいただきました参加者の皆様含め、すべての皆様に深く感謝申し上げます。
満席となった会場は参加者と講師の皆様の熱い思いがあふれ、セミナーや勉強会を大阪で開催する意義を大いに感じた1日となりました。
濵田晴行 (理事・日本放送協会)