優秀制作技術賞(柴田賞・鈴木賞)受賞一覧

優秀制作技術賞(柴田賞・鈴木賞)受賞一覧

本賞は、従来の柴田賞、鈴木賞としてお寄せ頂いた基金をもとに、他の模範になり得る業績を示した方々への顕彰事業として行って来たが、その趣旨を尊重継承し、ご遺族及び関係の方々にご承諾いただき「優秀制作技術賞」として統合、2017年に制定された。

柴田賞とは、後進の育成にも力を尽くされた故柴田氏のお気持ちを汲み、いわば新人賞としての性格をもち、各分野の若い技術者の奮起を促しているものである。
 鈴木賞とは、科学映画の撮影に多大な功績をあげられた当協会名誉会員・故鈴木喜代治氏に因み、科学映像の撮影技術者を対象としたものである。

対象となるのは、映画、テレビ、科学映像、イベント・プロモーションの映像制作の諸技術に従事している技術者で、他の模範になり得る業績をあげた者で、その職種に携わっておおむね10年までの個人とする。

 

第52回(2022年度)優秀制作技術賞受賞者

金丸 岳生 (かなまる たかお) 日本放送協会(NHK)放送技術局 制作技術センター 制作推進部

2003年NHK入局。青森放送局技術部配属。2009年本部異動後は、映像技術のリーダーとして4K・ファイルベース制作の過渡期から制作フローの改善・改革を率い、特にHDR/SDRの映像表現に対し、現場でオンセットグレーディングを行えるようアイデアと後工程までの設計を協議・確定し、高品位の映像制作を効率的に実現した。
培った知識と経験により、2012年の「紅白歌合戦」においてVEチーフを担当し、生放送音楽番組として初めてオリジナルのガンマカーブを採用した新たな映像表現にチャレンジした。特にハイライト部分の階調を意識した事で、ITU-R709の美しさを忠実に再現した。
また、NHK放送技術研究所が開発した「双方向ミリ波モバイル方式」を採用したワイヤレスカメラでは、新たにSIMO伝送方式を採用した変復調器を用いたことで、双方向無線通信が可能となり、ワイヤードカメラに迫るコントロール性を実現。同じ年の大河ドラマ「平清盛」のVEチーフを担当し、2大番組で真の「二刀流」として前人未踏の業績を上げた。
2022年度大河ドラマ「どうする家康」では本格的に採用したVP(Virtual Production)において、カメラ映像とスクリーン映像の高度な融合を実現した。新たな分野を自身の高度なスキルと判断力で切り開き、継続的な番組制作フローの構築につなげた実績は本賞に値する。

細野 和彦 (ほその かずひこ)日本放送協会(NHK)放送技術局 制作技術センター 制作推進部

1996年NHK入局。初任地奈良放送局で撮影技術を学んだ後、1999年大阪放送局へ異動後は、スポーツ番組、音楽番組を担当しつつ、朝の連続テレビ小説の撮影業務に従事。2005年よるドラで撮影チーフ、2006年連続テレビ小説の撮影チーフを担当。
2006年本部異動後は、大河ドラマでセカンドカメラマンを務め、ジブワークで構成する独特のドラマ撮影方法を習得した。その後、「ゲゲゲの女房」では撮影チーフとして「第66回ザ・テレビジョンドラマアカデミー賞最優秀賞」を受賞した。
「平清盛」では、現在の大河ドラマの先駆けである創造的な映像ルックで荒廃した世界観を作り上げ、その後「軍師官兵衛」「紅白が生まれた日」「精霊の守り人シーズン2」等で撮影チーフを担当している。2016年に名古屋放送局へ異動後は、テクニカルコーディネートに力を注ぎ、地域発ドラマ撮影に貢献。2018年本部異動後は、ドラマ撮影副部長として自身の経験を後進へ継承し、ドラマ撮影の基盤となる人材育成に尽力すると共に、新たなドラマ撮影技法の確立に挑んだ。2023年「大奥」では原作漫画ファンを納得させる映像世界観を、「恐竜超世界2」では、自らCGのカメラワークを設計し、新たなCG表現に結実させるなど、4K・8K制作ドラマ、VFXシーン撮影の先駆者として放送業界全体を牽引する活躍は本賞に値する。

阪上 啓介 (さかがみ けいすけ)株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス フィルム&レストレーション部 フィルムプロセスグループ

1998年 株式会社IMAGICA(現 IMAGICAエンタテインメントメディアサービス)入社。
現像部に所属し、現像や分析業務を経た後、プリント(焼き付け)技術を習得し技術者として独立した。その後、旧作映画の復元プロジェクトに関わり、劣化した原版フィルムの状態に合わせてプリンターを調整し、時には新たな部品を製作し対応した。そのような実績が評価され、2009年に日本で初めて重要文化財に指定された『紅葉狩』(国立映画アーカイブ所蔵)の復元案件では、最良の複製フィルムのプリントに成功した。
2007年からは映画のオプティカル作業にも従事した経験を活かし、映画制作フローがフィルムからデジタルに移行した後も、オプティカルプリンターを復元専用のプリンターへ改造することにより、それまで複製が不可能だった極度に劣化したフィルムの救出が可能となったことで、『一粒の麦』や『今日われ恋愛す』など、長く失われたとされた映画作品の復元に成功した。
2018年からは残存例の極めて少ないフィルムフォーマットの複製にも成功し、これらの特殊フォーマットから4Kスキャンできる装置の開発にも携わった。
このような技術と経験は、国内外の専門家からも評価されており、大学での講演やインターンシップの指導者としても貢献する姿勢は本賞に値する。

≪受賞一覧≫

第52回(2022年度)
金丸 岳生(日本放送協会 放送技術局 制作技術センター 制作推進部)、
細野 和彦(日本放送協会 放送技術局 制作技術センター 制作推進部)、
阪上 啓介(株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス フィルム&レストレーション部 フィルムプロセスグループ)
第51回(2021年度)
柏瀬 純子(株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス 映像制作部フィルムプロセスグループ)
第50回(2020年度)
柿崎 耕(日本放送協会 放送技術局 制作技術センター 制作推進部)、
中西 紀雄(日本放送協会 放送技術局 制作技術センター 制作推進部)、
野原 あかね(株式会社IMAGICA Lab. フィルム・アーカイブ事業本部フィルムプロセスグループ:現 株式会社IMAGICA エンタテインメントメディアサービス)
矢野 数馬(関西テレビ放送株式会社 技術推進本部 制作技術統括局 制作技術センター)
第49回(2019年度)
井上 大助(株式会社IMAGICA Lab.)、
岡野 崇(株式会社NHKテクノロジーズ)、
岩崎 亮(NHK・撮影)
第48回(2018年度)
牛尾 裕一(NHK・照明)、久保真人(IMAGICA Lab.)、
箱崎 将史(NHK・撮影)
第47回(2017年度)
大和 谷豪(NHK・撮影)、柴田幹太(IMAGICAウェスト)