MPTE第59回勉強会 報告

『マイクメーカーが語る、デジタルワイヤレスを映像業界にお薦めする7つの理由 』

開催日:2022年10月13日(木) 15:00~16:00
開催方法:Microsoft Teamsを使用
講  師:
 杉岡 桃 (シュア・ジャパン株式会社プロオーディオ部門 市場開発担当)
参加者:36名

 

シュア・ジャパン株式会社
  プロオーディオ部門 市場開発担当 杉岡桃

今回、日本映画テレビ技術協会様からこのような勉強会の機会をいただくにあたり、映像業界の皆さまに「デジタルならでは」「ワイヤレスならでは」のオーディオのメリットを具体的に解りやすくお伝えしたいと思い、以下7つの観点からご説明させていただいた。

1. ノイズに強い(図1)

ワイヤレスはCNR(Carrier to Noize Ratio:キャリア対雑音比)が基準以上取れていないと音声として復調されない。クリアな音質を保つために、一般的にはアナログは40dB以上必要だが、デジタルは20dB以上あれば復調できるので、ノイズが厳しい環境下でも安定した電波運用がしやすくなっている。

図1

2. 音質(図2)

CNRが取れなくなっていった時の音声のS/Nを見た時、アナログの場合、徐々にS/Nが悪くなっていく(車で聞くFMラジオがトンネルの中に入ると砂嵐の音がどんどん増えていくような現象)一方、デジタルは復調できなくなる直前までS/N比が悪くなることはなく、クリアな音質を保つことが出来る。

図2

3. 多チャンネル運用(図3)

同一空間で複数ワイヤレスを使う場合、使用しているワイヤレス間で不要波を発生させてしまう相互変調という現象がある。アナログのワイヤレスB帯域(806~810MHz)では、相互変調による不要波を回避する周波数配置が求められる為、一般的に最大6波が限界だ。しかしデジタルは、"ノイズに強い"という特性から、相互変調が発生しても各使用波がその影響を受けにくいので、最大10波使用することが可能である(通常出力の場合)。

図3

4. 秘匿性

アナログは音声信号をFM変調で伝送をしているので、広帯域受信機によって音声を簡単に傍受することが可能だ。一方、デジタルでは音声信号をデジタル変調し、多くのメーカー機種で「AES256」等の暗号化方式を採用している。これにより、広帯域受信機を含め、暗号化キーを同期している受信チャンネル以外は音声を復調することができないため、情報の漏洩を防ぎ、セキュリティの高いワイヤレスシステムを作ることが可能である。

5. 専用バッテリー

技術の進歩により、デジタルとアナログの駆動時間の差は縮小されてきている。また、専用電池を使うことで、電池切れの不安を軽減してくれる機能も搭載されている。Shureでは、専用リチウムイオン電池を使うことで分単位で電池残量を把握することが可能で、繰り返しの充電による電池自体のクオリティーの状況(サイクル回数、バッテリーヘルス)も可視化できるため、バッテリーの管理もしやすくなっている。

6. リモートコントロール

上位機種では、2.4G帯を使用して送信機をリモートコントロール(周波数変更、メニュー/電源ロック、RFミュート等)できるシリーズもでている(ShureではShowLink®という機能)。最初に受信機と送信機を同期させれば、設定変更のために送信機に触る回数を大幅に減少させることができる。

7.ゲイン調整

最適なオーディオ品質を得るには、送信機のゲイン設定が不可欠だ。一般的なワイヤレスシステムでは、音源のレベルに合わせて送信機のゲインを手動で調整する必要がある。また、予期せぬタイミングで音源のレベルが急激に上がった場合、送信機側で音源が歪んでしまう可能性がある。Shureのデジタルワイヤレスシステムでは、独自の自動ゲインレンジング機能を搭載することで送信機でのゲイン調整の必要がなく、代わりに受信機側でゲイン調整を行うというユニークな設計となっている。これにより、演者のカツラや服の中に送信機を仕込んだ場合にもゲイン調整のために送信機を回収する必要がなくなり、急なゲイン変化にも対応が可能となった。