MPTE第18回勉強会 報告

MPTE第18回勉強会(映像プロセス部会主催)
 「待ったなし!ボーンデジタルの映画保存」

日時:2015年4月22日(水)15:00~17:30

会場:富士フイルムホール/西麻布本社

参加者:100名

 
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挨拶:岸本部会長
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司会:平野副部会長
 

映画製作は全ての製作過程でデジタル化され、ボーンデジタルと呼ばれています。新作はフィルム形態での保存が難しくなる中、映画フィルムアーカイブへの取り組みと今後のアーカイブ保存の将来を担うLTOの有効性について、フィルムセンターと富士フイルムから講師を招き、勉強会を行いました。その内容をご報告いたします。 平野浩司副部会長(富士フイルム)の司会のもと、岸本義幸部会長(東京現像所)より開会の挨拶があり、2部講演で下記の通り行われました。

『第一部講演』
「東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)におけるデジタル映画保存に関する調査研究」
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講師:大関勝久ユニットリーダー(NFCデジタル映画保存・活用調査研究事業班)

NFCの業務の紹介から始まり、昨年7月から国からの補助金を得て始まった「映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業」の活動内容を判りやすく紹介いただいた。本事業の調査研究は、大きく3つのテーマからなり、①日本で製作・公開されたデジタル映画の状況調査と長期保存、②フィルム映画をデジタル技術を活用して長期保存及び活用、③諸外国におけるデジタル映画の保存に関する技術や法制度等に関する調査、を行い、合わせて、映画のデジタル保存・活用を担う人材育成も計画している。
H26年度に実施した米国でのアーカイブの動向調査では、メジャースタジオ4社(20世紀FOX他)、ポスプロ3社、アーカイブ機関3ヶ所を訪問して状況確認を行った。映画作品はアーカイブして長期に残すことが必然であり、日々増加するデジタルデータの取り扱いは、出来る限り自動化され、複数保管、遠隔地保管、オフライン保管等の安全対策が採られている。一方、どのような素材をどう残すかは、各社、各機関で独自に取り組まれており、統一はされていない。映像技術の進歩に対応するためには、より元の素材が必要となるため、何をどう残すべきか今後の課題である。その映像技術として注目されていたのが、ハイダイナミックレンジ(HDR)とカラースペースの拡大であり、これらに対応可能な米映画芸術科学アカデミーが推奨するACES( Academy Color Encoding System )規格に高い関心が払われていた。また、米国議会図書館での映画保存や南カリフォルニア大学でのデータ保存サービスについても紹介があった。
調査研究事業は3年間の継続を目指しており、H27年度も継続して活動される。

『第二部講演』
「デジタル映像の長期保存に於ける磁気テープの活用:現状と将来展望」
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講師:江尻清美統括マネージャー(富士フイルム(株) 記録メディア事業部)

様々な産業分野で生成されるデータは年率50%程度で増え続けると言われており、要求されるデータストレージ容量も増大化が進んでいる。映画業界も同様で、急増するボーンデジタルの映像を安全かつ低コストに長期保存することが重要な課題になっている。
また、データストレージに対するニーズも変化しており、従来は必要なデータのバックアップや法的規制に対応した受動的ストレージであったが、現在はBig Data活用で代表されるように、データ自体をビジネスに活用するため、付加価値の高いデータを再利用するための能動的ストレージの要求が高まっている。テープストレージであるLTOは、ストレージ領域の70~80%を占めるアクセス頻度が低いコールドデータの記録媒体として適しており、転送速度や記録容量の向上にも優れたメディアである。記録容量の拡大には、磁気テープの高密度化が技術課題であるが、現状LTO-6の88倍となる高密度化の可能性が検証されている。(カートリッジあたり2.5TB⇒220TB)
このようにLTOは、安全(システム障害の回避)・長期保存(メディアの安定性)・高容量・カートリッジ規格の継続性で優れており、大容量データの長期保存ニーズに応えるメディアである。

『講演を終えて』
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活発な質疑応答がなされた

講演後の質疑応答では、日米のアーカイブへの意識の違いやLTOの日本での活用事例等、活発な質問があり、アンケートは、出席者の半数以上となる54名から回答がありました。
今回の勉強会は参考になったと答えた人が91%と高く、感想として、「非常に良いテーマだった」、「ハリウッドの動向が興味深かった。」「LTOの理解が深まった」、「日々扱うデータが大きくなっており、対応できるか心配」、「DCPの保存では不十分と思った」等、アーカイブの重要性を再認識でき、先送りできない課題であることが、十分伝わった勉強会になったと思います。
また、映像データを保存していくのにあたって、もっとも大きな課題について聞いたところでは、「映画やテレビ番組だけでなく、多用なデータ型式のデジタル映像は今後もどんどん増えていく.どうしたものか」、「アメリカの真似はできないだろうが、日本としてどうするのか」、「保存方法の統一化、規格化を進めて欲しい」、「利活用を促す働きかけを活発に行って欲しい」「データのマイグレーションの費用を考えると頭が痛い、マイグレーションが最大の課題では」等、たくさんの提案をいただきました。
今後とも、アーカイブに関する勉強会を継続して企画していきたいと思います。

最後に、森澤克彦専務理事(レイ)の閉会の挨拶で、終了しました。

<映像プロセス部会副部会長 平野浩司>